
新しい写真屋さんのカタチ。ブルームギャラリーの窪山様に直撃インタビュー
今回のお得意様インタビューでは、新しいカタチの「写真屋さん」を目指すブルームギャラリー代表の窪山洋子(くぼやま ひろこ)様にお話を伺いました。ギャラリー運営からフォトラボ事業への転換、そして地域と写真をつなぐ独自の取り組みについて、その熱い想いを語っていただきました。
ギャラリーから「まちのしゃしんやさん」へ
−まずは自己紹介と、現在の活動に至るまでの経緯を教えてください−
窪山様:
ブルームギャラリーは、2009年に開廊した写真専門のギャラリーで、長年、写真作品の販売や作家のマネージメントを中心に行ってきました。しかし、コロナ禍による長期間の休廊や私自身の出産を経て、新たな挑戦としてフォトラボ事業をスタートさせました。
ギャラリーに併設するスペースに銀塩ミニラボ機を導入、2023年から約2年間、「まちのしゃしんやさんプロジェクト」として、現代における街の写真屋さんのあり方を再考するパイロット事業を実施しました。現在はその経験を活かし、フォトラボ事業に専念するためギャラリー事業をひと休みしています。店舗にとどまらず、さまざまな場に出向きながら「写真を楽しむ・残す」活動を展開しています。

▲導入した銀塩ミニラボ機(Frontier LP5000R)

▲内観(フォトラボ側)

▲内観:ギャラリー側
「こりゃダメだ!」からの大転換。B to B to Cモデルへの挑戦
−街の写真屋さんには「可能性がある」と信じて活動されているそうですね−
窪山様:
はい、その想いは3年前も今も全く変わりません。周囲からは「いまどき写真屋さんを作るなんて、絶対無理」と言われ続けてきました。しかし、さまざまな分野の方々とお仕事をさせていただく中で、「こんなに面白い仕事はない」とあらためて実感しています。
とはいえ、事業を始めた当初は「こりゃダメだ!(全く儲からない)」の連続でした。1時間以上かけてプリント1枚の売り上げだったり、世間話だけで終わってしまったり……。そんな日々を経験し、個人商店としての写真屋さんが生き残るためには、従来の「B to C(店舗から直接お客様へ)」が当たり前だった時代とは異なる、新しいビジネスモデルが必要だと痛感しました。
そこで現在は、ビジネスモデルを「B to B to C(企業や団体を通じて一般のお客様に届ける仕組み)」へと大きく転換しました。企業様や団体様、教育機関と連携し、写真プリントの楽しみをより広く伝える活動に注力しています。

▲企業でのワークショップ(活動アーカイブ)

▲地域の思い出を残す編集ワークショップ@大阪
「ワクワク」を持ち帰る。写真プリントを使った体験プログラム
−具体的には、どのような活動をされているのでしょうか?−
窪山様:
早い段階から、写真プリントを使った体験プログラムを実施してきました。例えば、「ましかくプリント」を使った写真編集ワークショップは、これまでに500名以上の方にご参加いただいています。
フィルムカメラの時代は、撮影済みのフィルムをお店に持っていき、「どんな写真が撮れているかな?」とワクワクしながら出来上がりを待つ豊かな時間がありました。今は誰もがスマホで簡単に写真が撮れ、すぐに見られる便利さがあります。しかしその反面、自分が撮った写真を「はじめて見る」ときのあのワクワク感は薄れてしまいました。
だからこそ、撮った後にどれだけ「ワクワクを持ち帰る写真体験」を提供できるかが、今の私たち写真屋さんに求められている役割だと考えています。まずはグループワークなどの体験プログラムに参加していただき、その楽しさを知った方がリピーターとして、個人の写真プリントやアルバム制作のために来店してくださる。そんな好循環のモデルを目指しています。

▲学生向け写真編集ワークショップ

▲学生向け写真編集ワークショップ
写真を文化資源として街に残す。10年後では遅すぎる地域課題
−地域に根ざした活動もされていると伺いました−
窪山様:
はい、もう一つの大きな柱として、個人が保有する写真の中から、地域特有の風土や文化が写った写真を「文化資源」として残す活動を各地で行っています。
ブルームギャラリーの拠点である大阪市淀川区での事例を挙げると、今年で創立100周年を迎える小学校の「写真アーカイブプロジェクト」があります。学校に保管されている古い写真を、児童たちと一緒に未来へ残していく取り組みです。また、地元のお寺と協力して地域の思い出を残す活動や、地域団体・個人が保有する写真を公共の場にアーカイブする活動も進めています。
地域の思い出を地域の人たちと一緒に集める活動は、時間も労力もかかります。しかし、「10年後に始めたら遅い」のです。シニア世代が大切に保管してきた膨大な量の写真が、日々大量に捨てられている現状を目の当たりにすると、これは早急に取り組むべき地域課題だと強く感じます。だからこそ、この5年ほどで一気に進めたいと考えています。
現在は少しずつ賛同の輪が広がり、協力してくださる方も増えてきました。私たちの活動を通じて「地域の思い出を共有する枠組み」を作り上げ、ゆくゆくは他の地域にも広めていきたいという想いで取り組んでいます。

▲写真整理ワークショップ@十三、大阪

▲窪山家のアルバム(祖父母から引き継いだアルバム)
新たな屋号「風の写真屋さん」に込めた想い
−最後に、今後の展望や読者へのメッセージをお願いします−
窪山様:
昨今、写真屋さんは斜陽産業だと言われることもあります。しかし、世代間のコミュニケーションが希薄になりがちな今の時代だからこそ、街の写真屋さんには大きな可能性があると信じています。
写真が1枚あるだけで、異なる世代が対話でき、想いや出来事を継承することができます。スマホの普及で写真はより身近になりましたが、手触り感のある「写真プリント」は、子どもからシニア世代までをつなぐ交流のきっかけになります。そして、次世代へ「思い出」と「モノ」として確実に残すことができます。
その橋渡し役として、街の写真屋さんは重要な役割を担っています。その土地その土地に根付いた写真屋さんが、全国に増えていってほしいと願っています。
ちなみに、これまで自分のお店にきちんとした「写真屋さん」としての屋号をつけていなかったのですが、先日ようやく名前が決まりました。この場を借りてご報告させてください。
お店の名前は「風の写真屋さん」です。写真の風通しをよくする写真屋さんとして、拠点を持ちつつも、ひとつの場所にとどまらず、これからもさまざまな場所に出向き、その土地の人々とともに新しい風を吹き込んでいきたいと思っています。この記事を見ていただいた皆様とも、いつかどこかでご一緒できることがあれば嬉しいです。

▲団地の思い出を残すためのワークショップ@兵庫

▲団地の思い出を残すためのワークショップ@兵庫

▲外観
窪山様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。「風の写真屋さん」の今後のご活躍を心より応援しております!



