ソニーα7III フルサイズミラーレスはプロの現場で使えるのか?スペックを比較してみました
進化を続けるミラーレス機の中でも、プロからの注目を一際集めているのが、「ソニーのαシリーズ」です。
現時点で唯一のフルサイズミラーレス機であるだけでなく、連写やAF性能といった部分では、各社のプロ向け一眼レフをカタログスペックで凌駕さえしています。
特に、2017年に発売された「α9」のブラックアウトフリー・693点AF追従の 最高20コマ連写という脅威の性能は、プロ市場におけるミラーレス時代が到来することを予感させるものでした。
今回はそんなαシリーズの中から、2018年に発売された「ベーシックモデル」ながらα9ゆずりのハイスペックを誇る「α7III」をご紹介します。
カメラとしての完成度、そしてキヤノンやニコンのプロ向け一眼レフとの比較、プロが仕様する上でのメリット・デメリットを徹底解説いたします。
α7IIIとは?
α7IIIは2018年2月に発売された、ソニーのフルサイズミラーレス一眼です。
主な特徴を上げると
● 有効約2420万画素の裏面照射フルサイズセンサー
● ISO100-51200(拡張で最大ISO204800)
● 693点の像面位相差AF
● AF/AE 追従約10コマ/秒の高速連写
● 最大710枚のバッテリー性能
となります。レンズマウントはソニーのフルサイズミラーレス向けのEマウントとなります。
一見すると、従来の一眼レフ機と比較しても申し分のないスペックを持ったα7III、
しかし、これだけのハイスペックでも実はソニーのラインナップ上は「ベーシックモデル」なのです。
ソニーのラインナップ上のα7IIIの位置付け
ソニーのラインナップは
● 高速性能重視のα9シリーズ(最新機種:α9)
● 高画素表現のα7Rシリーズ(最新機種:α7RIII)
● フルサイズのベーシック機のα7シリーズ(最新機種:α7III)
● 高感度撮影向けのα7Sシリーズ(最新機種:α7S II)
があり、今回のα7 IIIはベーシックモデルにあたります。
ニコンやキヤノンでいうところの、D750や6D MarkIIのポジションですね。
前機種のα7IIからは、約3年ぶりのモデルチェンジとなります。
ソニーのラインナップ上の注目点は、上記の最新機種のうち3台は2017年5月以降、1年以内に相次いで発売されている点です。
ベーシックから高速連写機までフルラインを一気に揃えてしまう開発ポテンシャルは、ソニーならではと言えるでしょう。
α7IIIとα7RIII、α9の違いは?
では、そんなベーシックモデルのα7IIIと、α7RIIIやα9との違いはどこにあるのでしょうか?簡単なスペック表で比較してみましょう。
α7III | α7RIII | α9 | |
有効画素数 | 約2420万画素 | 約4240万画素 | 約2420万画素 |
ISO感度 | |||
シャッター速度 | 1/8000-30秒(メカシャッター) | 1/8000-30秒(メカシャッター) | 1/8000-30秒(メカシャッター) 1/32000-30秒(電子シャッター) |
連写速度 | 最高約10コマ/秒 | 最高約10コマ/秒 | 最高約20コマ/秒(電子シャッター) |
撮影可能枚数 | ファインダー:約610 液晶モニター:約710枚 | ファインダー:約530枚 液晶 モニター:約650枚 | ファインダー:約480 液晶 モニター:約650枚 |
測距点 | 693点(位相差) 425点(コントラスト) | 399点(位相差) 425点(コントラスト) | 693点(位相差) 25点(コントラスト) |
ファインダー視野率 ファインダー倍率 | 100%(視野率) 約0.78倍(倍率) | 100%(視野率) 約0.78倍(倍率) | 100%(視野率) 約0.78倍(倍率) |
記録スロット | デュアルスロット (UHS-II対応は1枚) | デュアルスロット (UHS-II対応は1枚) | デュアルスロット (UHS-II対応は1枚) |
本体重量 | 約650g | 約657g | 約673g |
参考売価(ソニーストア) | 229,880(税別) | 349,880円(税別) | 448,800円(税別) |
こうして比較すると、α7IIIがα7R IIIやα9と比較して遜色が無い点が分かります。
画素数の違いやシャッター速度の違いこそありますが、金額が一回り、二回り違う機種の特徴が、いいとこどりで反映されています。
プロの現場でも活かせるα7 IIIのメリット
さて、ここまで見てきたとおり、カタログスペックでは十分な性能を持ったα7IIIですが、
写真館を始めとした撮影業の方に活かせるポイントとしてはどのような点があるでしょうか?
AFをカメラ任せにできる瞳AF
ミラーレスだからこそできる顔認識機能、ソニーのカメラはその中でも被写体の瞳を検出して追従する「瞳AF」機能がとにかく高性能!
おそらく、ポートレート撮影のカメラマンがソニーのカメラを使うならば、最大のメリットではないでしょうか?
瞳AFの性能は動画で確認いただいたほうが分かりやすいです。
動画はこちら
被写体が大きく動いてもピントが追従し、振り返ったあとからでも瞬時にピントが復帰します。
α7IIIでは測距点がセンサーのほぼ全面。カメラを被写体に向ければそこからはカメラがやってくれる、と言ってもいいでしょう。
スタジオで使うならば、動き回るお子さんを撮るときなどに、あえてカメラを構えずに撮る――ということもできそうです。
10コマ/秒のAF/AE追従連写 機能
連写機能に特化したα9には及ばないものの、α7IIIでも秒間10コマの連射を実現しています。
写真館でのスタジオ撮影でここまでの連写は使わない!という方もいるかもしれませんが、逆に言えばコマ数の少ない連写でもより安定した撮影ができるということでもあります。
また、α7IIIでは2420万画素と、「ちょうどいい画素数」に抑えられているため、高画素機と比較すればメディア容量を圧迫しない点もメリットでしょう。
上記の瞳AFと組み合わせれば、より決定的な瞬間につながる撮影ができるのではないでしょうか。
ミラーレスとして業界最大の撮影枚数
ソニーのミラーレスの地味ですが、特筆すべき進化点が撮影枚数、すなわちバッテリー容量です。
ファインダー使用時で610枚、液晶モニター使用時で710枚という撮影枚数は、各社ミラーレスの中でも圧倒的にバッテリー効率が良いです。
フルサイズセンサーというと、カメラ内での画像処理で電力消費が多そう・・・な気もするのですが、そこが改善されているのは安心感が違います。
スタジオ・写真館でミラーレスというと、フジフイルムのXシリーズを連想される方もいると思います。
しかし、フジフイルムのX-T2の場合、撮影枚数は約340枚。スタジオ内で使用するなら問題無いかもしれませんが、ロケ撮などに使用するならば予備バッテリーも多めに用意しなくてはいけません。
α7IIIをプロの撮影現場で使うときの心配な点
ここまでカタログスペックで見てきたα7IIIですが、逆にデメリットやこれからの課題点はどんなものがあるでしょうか?
ボディとグリップが小さすぎる
α7IIIをプロの方が使用する上での最大のデメリットがボディとグリップが小さいこと。
実機を持っていただいた方は分かると思うのですが、標準的な男性の右手だと小指が余ってしまい、グリップ感が悪くなります。
ラインナップでいうとベーシックモデルではあるので、アマチュアの使用シーンを考えたらボディの小ささはメリットではあります。
スタジオ写真館でも、女性カメラマンなどが使う場合はグリップが小さいほうがいいですよね。
……しかし、問題はα7 IIIが「フルサイズセンサー」を搭載していること。
そう、ボディは小さくできても、レンズが小さくならないのです。
例えば、定番の24-70mm F2.8や24-105mm F4といったレンズをキヤノンと比較すると、以下の通りとなります。
キヤノン | ソニー | |
24-70mm F2.8 | 805g | 886g |
24-105mm F4 | 795g | 663g |
24-105mm F4で見ればソニーのほうが100g以上軽いですが、それでもボディとセットにすると1kgを超えてしまいます。
ある程度の重量のレンズを使うならば、当然ボディとレンズのバランスが取れていないと使いにくくなります。長時間使うことを考えると、すこし不安になるポイントでしょう。
ちなみに、そんなグリップ問題を解決するために、アクセサリーとして小指方向に拡張するグリップエクステンションがメーカーから発売されています。
たしかにホールド性は増すものの、デメリットとして三脚が使用できなくなります。また、このエクステンションだけでも希望小売価格で12,800円と決して安くありません。
プロカメラマンらしさを演出する「見た目」までこだわるならば、バッテリーグリップをつければ解決です。
しかし、今度はいよいよ一眼レフと変わらない大きさになってしまいます。
いずれにせよ、α7 IIIを検討される方は、一度自分の手になじむかどうかを確認いただいたほうが良さそうです。
ボディの耐久性が未知数
これは他のミラーレス機でも同様ですが、ソニーのミラーレスはまだまだプロの市場では導入が始まったばかり。
学校写真やロケ撮影など不確定要素の多い撮影で長時間使用された実績がまだありません。
スペック上は「防塵・防滴に配慮した設計」と記載されているものの、若干の不安が残るところです。
砂埃の舞う学校の運動会撮影を連日こなすシチュエーションなどでは、レフ機と比べて慎重な使い方をすることになりそうですね。
撮影システムを変更するためコストがかかる
これはα7 IIIに限らず、すべてのカメラに言えることですが、マウントごと変更するのはやはり初期導入コストが発生します。
スタジオ・写真館の場合、ライティング機材の互換性も気にする必要がありますよね。
フォトルプロの場合、カメラやライティング機材といった幅広い機材を買取することができるため、(https://728oroshi.jp/article/lp/kaitori)コスト面ではお役に立てるかと思います。
しかし、納品物の色の出方などを改めて調整しなければならないため、じっくり時間をかけてカメラに慣れていくことになるのではないでしょうか。
レンズの面では、シグマよりαシリーズにEFマウントレンズを装着できるマウントアダプター「MC-11」が発売されています。
業務用途でのマウントアダプターの使用は慎重にならざるを得ませんが、まずはボディとマウントアダプターでミラーレスに慣れていき、徐々に移行するのも選択肢のひとつといえるでしょう。
スペック上は実務レベル!現場使用はジャンル次第?
以上、ソニーのαシリーズについてご紹介いたしました。
AFや連写性能のカタログスペックでは、一眼レフの上位機種と比較しても遜色がありません。
ボディバランスやミラーレス特有の使用感で折り合いがつけば、十分に実務で使用できるのではないでしょうか。
プロカメラマンでオススメできるジャンルは
・瞳AFを活かせる子ども写真のスタジオ写真館
・販促写真や店舗撮影を撮影するフリーランス
・ブライダルなどのロケーション撮影
などのジャンルです。
瞳AFのメリットは先に述べましたが、出張撮影に向いた機能としてα7IIIにはチルトシフト液晶や4Kの動画撮影があります。
ハードな撮影に持っていくにはやや不安ですが、一般的な出張撮影用途ならばむしろコンパクトなボディは大きな利点です。
また、αシリーズは記録メディアもすべてダブルスロット。SDカードのエラーでのデータ消失リスクも軽減できます。
動画撮影はミラーレスカメラならば当たり前なので、スペックとしての紹介は割愛しました。
しかし、ムービーカメラとしても十分使える動画機能を持っているため、ブライダル系などでは随時使用できるといえるでしょう。
いかがだったでしょうか。
カメラ業界の「ゲームチェンジャー」とも呼ばれるソニーのαシリーズ、α7IIIについてご紹介いたしました。
もはや、ミラーレスだからといって侮っていられませんし、ニコン・キヤノンに続く第3の選択肢として存在感を増していくソニーのαシリーズ。
皆さんのスタジオでも、ミラーレス時代を見据えて是非導入を検討してみてはいかがでしょうか。
フォトルプロでは、ソニーのミラーレス機を各種取り扱っております。
また、デモ機のご相談やスタジオシステムのご相談も承っております。
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