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ネイチャーフォトグラファー 山写(Yamasha)氏によるPanasonic LUMIX S1Rファーストインプレッション。

山岳写真を専門とする私が選ぶカメラの基準としてまず壊れないこと、データ損失リスクが少ないことが絶対条件となります。

その2つを満たすフルサイズミラーレス機というものが少ない中、プロのフォトグラファーの道具として作られたPanasonic LUMIX S1Rに興味を持つのは必然でした。

山岳写真やネイチャーフォトの分野でのこのカメラの情報は少なかったこともあり、今回ナニワ商会さんからお借りしてS1Rがどのようなカメラであるのかを確認しました。

2週間という短い機会なのでレビューができるほど使い込むことができなかったため、ファーストプレッションとして読み進めてください。

使用レンズはキットレンズのLUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.を使用し、LUMIX S1シリーズ、Panasonicがどのような絵作りをするのに注目して検証しました。


手に馴染む大きなボディ


よく「山岳写真では軽量なカメラが一番大事なのでは?」という質問をされることがあります。
これは一般ユーザーの方のみならずカメラメーカーのマーケティング部や開発の人からも同じような質問を受けます。

答えは否。私の意見としては小さいボディでは山岳写真家として仕事で使うのは難しいと考えています。

確かに小さいボディと小さいレンズの組み合わせは軽量であることから山に登る体力を温存でき、遭難事故のリスクも減らすことができます。しかし厳冬期など厚手のグローブを使用して撮影する場合、ボディが大きくないとカメラを握ることもできなくなり、間違ってボタンを押してしまうヒューマンエラーが頻発します。


理想は大きいボディに小さいレンズです。


ボディが大きければF2.8ズームのような長いレンズを装着してもフロントヘビーになりすぎることないため撮影での疲労軽減に繋がります。

その見方からするとLUMIX S1Rは一眼レフ機でも上位機種に相当するボディの大きさがあり、グリップ感や操作性に関しては他のフルサイズミラーレス機とは一線を画しているという印象を受けました。

高画質を追求するための大きいレンズを自在にコントロールするためのバランスが取れており、「プロの道具」と銘打ってるのも納得のボディです。


直感的にコントロールできるボタンとダイヤル

LUMIX S1Rは多くのボタンが配置されています。その配置が優れており直感的に最適な設定を作ることができます。

具体的には連射やタイマー撮影、AFモードの切り替えがダイヤルであること。AFの種類(ワイド・ピンポイントなど)もワンクリックしてからダイヤルを回して選択できる点です。

ボタンが少ないカメラだとインフォメーションボタン>AFの選択画面>AF選択と3つのアクションが必要であることに対し、S1Rはほとんどの操作が2アクション以内でできるようになっています。

最低限の作業量で設定をつくれるように配慮されているのだと感じました。

グリップとマウントの間も十分なスペースがあり、オーバーグローブを装着した状態でもグリップを握ることができます。


撮影に集中できる露出コントロールボタン群

一度押すと離しても機能し続けます。それを解除するにはデフォルト設定ではシャッターボタンの半押しです。この機能の優れている点、それは一度ボタンを押して指をシャッターボタンに戻し、あとは親指のダイヤルで露出をコントロールしてすぐにシャッターを切ることができところです。

露出補正などのボタンを人差し指で押し込みながら親指のダイヤル操作でコントロールする操作が多くのカメラに見られる補正のワークフローですが、そこからシャッターを切るまでにワンクッション入ってしまうという難点が解決されています。

この仕様によりEVFで露出を確認したらすぐにシャッターを切れるようになり、特にスナップではその快適さを実感しました。


高画素EVFによるピントの取りやすさ


一眼レフでもフラッグシップに採用されることが多い丸形のアイピースと576万ドットによる高画質のEVFはネイチャーフィールドでも細かなところまで見ることができ、またマニュアルフォーカスで特に発揮され、S1Rのもつピーキング機能や拡大で正確なピントを取ることができます。

ただEVFという特徴上、肉眼で見る景色とは異なるものが見えてしまうことや、光の細かいディテールを掴むことは難しいのは避けられない問題なので、一眼レフから移行を考えている人は割り切る必要があると感じました。



LUMIX S1RのピンポイントAFを使用すると速度はワンポイントAFなどに劣りますが、EVFの中にもピントを取る位置が拡大で表示されるので正確に合わせることができます。



同じくマニュアルフォーカスでも拡大とピーキング(ピントが合っている面に色が付く)が表示されるため浅い被写界深度であっても積極的に使っていけます。

高画素EVFとフォーカスを補助するS1Rの機能が上手く連動し、マニュアルフォーカスでのピントの追い込みが快適に行えます。


過酷な環境には必須のダブルスロット

現在のミラーレス一眼にはシングルスロットとダブルスロットの両方があります。

シングルスロットにすることでボディを小型にできるなどのメリットはあるのでどちらが正しいというものではないのですが、私のような極地で撮影をするタイプの写真家にはダブルスロットが必須です。

なぜならまずメディアは高確率で壊れます。次に厳冬期の山の稜線などでメディア交換時が必要になったとき、オーバーグローブ越しでカードを交換しようとすると落下させ紛失することもあります。

このようなリスクがあるためクライアントに確実に写真を届けるためにもメディア2枚でバックアップを取りながらの撮影環境が必須です。

LUMIX S1Rは高速のXQDとSDカードのダブルスロットを採用しているため、データ管理に関しては安心して運用できます。

注意点としては低速のSDカードを使うと記録に時間がかかりプレビューや長秒ノイズ処理に時間がかかったりとワークフローにかなり影響が出るためRAW+JPEGでバックアップ撮影をするのであれば販売されているメディアの中でも最高速のものを選ぶのが最低条件であると感じました。


光る肩液晶とボタン

夕焼けや朝焼けの撮影が多い山岳写真は暗闇の中で撮影することが多くあります。数年間使い続けたボディであればブラインド操作も可能ですが、新しいカメラに乗り換えた時はそううまくいきません。

S1Rは3050mAhの大容量バッテリー、USBによるPD給電にも対応していることもあるのか主要ボタンが光ります。これによりニューマンエラーが少なくなり暗所での撮影パフォーマンスが向上します。

各社一眼レフにあってミラーレス一眼で排除されたものがこのボタンが光る仕様であることから、余裕のあるボタン配置に加えて光るボタンの組み合わせはプロ機としての矜持を感じます。


バッテリー管理には難点がある

大容量バッテリーを搭載し、XQDでの撮影で約340枚、省パフォーマンスモードで1100枚撮影できると説明書に書かれています。

実際に検証した結果でもRAW+JPEG / バックアップ記録で426枚撮影し、残量20% であったことから期待値は公式のものよりも高く見ても問題ないと思います。

その上で感じたのがバッテリー管理のワークフローの課題。

ミラーレス一眼は一眼レフの光学式のOVFとは違いEVFや背面モニターといった電力をたくさん使用するため頻繁に電源をOFFにしたりスタンバイ状態にしないとあっという間にバッテリー残量がなくなります。

その管理方法としてS1Rの省パフォーマンスモードでは操作しない時間が1秒あると自動でスタンバイに入るというものでした。これなら1100枚撮影できると。

実際に試してみたところ操作中や撮影中にもスタンバイに入ってしまうことがあり現実的ではありませんでした。かといってシャッターを切ったらすぐに電源をOFFにできる位置に電源ボタンがない。これがバッテリー管理を非効率化していると感じました。

例えばファンクションキーにスタンバイに入るボタンを割り当てることができれば1枚撮ってスタンバイということを繰り返して省電力で運用できるのではないかと思います。


作例

以上のS1Rの特徴を使ったワークフローで撮影した作例をご紹介します。レンズはすべてLUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.で色空間sRGBでのJEPGでレタッチはしていません。

LUMIXの絵作りは「生命力・生命美を描ききる。」をコンセプトにしているらしく、ネイチャーフォトグラファーの琴線に触れる言葉です。自然風景がどのように表現されるのかを長野の山で撮影してきました。

まずは山の稜線。24-105mmという高倍率ズームながらしっかりと解像しています。

この写真撮影には空の白飛びを防ぐためにNiSiのハーフNDフィルターであるミディアムグラデーションGND16を使用しています。

燃えるような夕日も彩度が高くなりながらもきっちりとディテールを残し表現できています。上部は強いコントラストながらも下部の霞がかった山並みの繊細な黒のシルエットが潰れることなく残っています。

中間調の淡い色味のグラデーションの階調も豊かです。




好みの問題になりますがLUMIX S1Rの絵作りで気に入った表現がこのような暗所の中での光の表現。ハイライトからシャドウまできっちり表現しきりながら固くなりすぎないしっとりとした絵作りが特徴的だと感じました。

もう少し面白みがあってもよいかとも思いますが、業務で使いやすい素直な色という印象です。


4730万画素のLUMIX S1RとS 24-105mm F4 MACRO O.I.S.の組み合わせだと木のディテールや葉の1つ1つを描写しきることができます。


LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.のハーフマクロの使い勝手の良さ


キットレンズであるLUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.の大きな特徴といえるのが撮影倍率0.5倍であり、ちょっとしたマクロレンズとしても使用できる点。

撮影機材を背負って山に登る山岳写真ではマクロレンズを持っていけない、レンズ交換する余裕がないということも多いため標準ズームでここまで寄れるレンズがあると表現の幅が格段に広がります。

これはアウトドアフィールドで撮影するフォトグラファーにとっては非常に魅力的です。



LUMIX S1Rと S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.の課題点



解像も十分でハーフマクロまで寄ることができる標準ズームレンズとして使い勝手の良さがあるLUMIX S1RのキットレンズであるS 24-105mm F4 MACRO O.I.S.ですが、ネイチャーフォトに関して気になることが1つだけあります。それが逆光耐性です。


ネイチャーフォトの表現の定番の1つである逆光での光条ですが、レタッチでも誤魔化せないゴーストが出ます。


他社製のレンズフィルターを使用するとゴーストがなくなったり軽減されたため、おそらくはボディかレンズかの特性だと思われます。

絞りを空けた逆光でも同様に、おそらくはセンサーの反射であろう影響が見られます。これがすべてのレンズで出るものなのか、S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.のみで発生する現象なのは検証するには時間が足りませんでした。

Panasonicさんに質問したところこれはS1Rボディ自体の問題という回答でした。今後改善されていくことを期待します。

現状では逆光時にこのような表現になることは間違いないので、山岳写真で少しでも逆光が入るシーンでは使用をためらいます。

プロの道具して開発されたLUMIX S1Rとキットレンズですので、この部分に関してはもう少し頑張って欲しいところでした。低気温仕様、防塵防滴の機能は備わっておりネイチャーフィールドでも安定したパフォーマンスが期待できるシステムだけに少し残念です。

操作感が素晴らしいだけに、この点で評価を落としてしまいそうで少し勿体ないと感じました。この逆光耐性の弱さえなければ山岳写真の定番として多くのプロが常用できるのではすら思うほど描写力や使い勝手の良さがあることは間違いありません。


高感度ノイズ

ISO6400で固定して暗所を撮影しましたがディテールが破綻するほどのノイズもなく汚い色もないナチュラルのノイズです。


ボディの性能は申し分なし。一部の描写に関しては改善を期待

2週間という短い期間での試用ということで機能を使い切ることができずファーストインプレッションに過ぎない感想ですが、山岳写真において重要な操作性やボディバランス、AFの精度に関しては非常に作り込まれており大満足の性能です。この点に関してはプロ機の名に恥じない完成度だと思います。

しかし逆光時に描写が暴れるのは風景写真に置いては扱いづらいシステムです。S1R本体の仕様だと回答をいただいていますがレンズによっては改善された描写になるかもしれません。

今後発売されるLマウントアライアンスによるズームレンズに期待です。

Panasonic・Leica・SIGMAによるLマウントレンズはこれから一気に数を増やしていくでしょうから撮影目的に合わせて最適なレンズを選ぶことができる強みがあります。

Panasonicの作る「生命力・生命美」を描ききる絵作り。今回はビビッドの設定を多用しましたが、彩度が高い部分を引き立たせながらもハイライトを飛ばさずシャドウを潰さず、中間色のキレイに表現していることから力強さと滑らかさの両立する絵作りです。

暗所で光が差し込むシーンをマクロで撮影したり岩のディテールを表現するときに際立ち完成度が非常に高いと感じました。

試用したのが夏であるため-25℃まで気温が落ちる厳冬期の山の稜線でキチンと動くかは確認できませんでしたが、南極で試験運用している実績から考えて期待値は高いのではないかと思います。

ネイチャーフォトにおけるLUMIX S1Rの情報が少なく購入を検討されている方も多いと思いますので、参考にしていただければ幸いです。


【プロフィール】
山写(Yamasha)https://yamasha.net/
ヒマラヤやヨーロッパアルプスを撮影していた山岳写真専門のネイチャーフォトグラファー。現在は日本の北アルプスを拠点にしている。元WEBディレクター&フロントエンドエンジニア。アウトドアメーカーやメディアと仕事したり、ぱくたそにフリー素材として写真を提供しています。



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